姉歯建築士とe-文書法
昨年末から、世間を騒がしている姉歯元一級建築士による耐震偽装事件は
一級建築士という名誉もあり、仕事への誇りも持っているであろう
エリートですら、生命への危険もある、建築物の耐震強度計算の偽装
事件を起こしてしまったという点で驚きです。
でも、事件の本質はそういうことを予測し対応していなかった仕組みに
あります。姉歯元建築士の「私だけでできることではない」という言葉、
ヒューザー社長の「正規の建築確認申請が通っているのだから私も
被害者だ」という考えは、建築基準法、検査機関、建築物の瑕疵保障
などの仕組みもたったひとりの不正でもろくも崩れる危うさを示しています。
おそらく、これから法改正もあり、検査機関の認証も厳しくなり、いろいろ
仕組みが変わっていくでしょう。しかしそれだけでは100%偽装を防げる
わけではありません。
人手でチェックするやり方では限界があるからです。
アジアの国のなかには、構造計算書の提出を電子文書で行い、電子署名
で改ざんを防止しているところがあるそうです。
もし、構造計算のソフトウエアに入力データも、計算結果も含め、電子署名
をされる仕組みがあれば、構造計算の素人でも改ざんがわかります。
犯罪を検出するだけでなく、構造計算書に電子署名をすることが
広く浸透していけば、「とうてい偽造はできないから改ざんなんてやめよう」
という大きな抑止力になれる可能性を示しています。
こちらの効果のほうがずっと重要でしょう。
電子署名に計算をした日時や、承認をした日時をタイムスタンプで証明したら
完全でしょう。(電子署名だけでは完全ではありません。有効期限の問題や本人
による故意の改ざんに弱いからです。これらの解説については、このブログで
順次ご紹介していきたいと思います)これらの電子的な方法は費用的には、
マンションの立替に比べたら、数千分の1以下でできるでしょう。
確実に改ざんを検出できるのは、犯罪の強力な抑止力になります。
実はこの電子署名とタイムスタンプによる真正性の確保の方法は
e-文書法ですでに技術的にも確立された方法なのです。
昨年施行されたe-文書法ではいままで紙による証憑でしか認められなかった
税務書類などをスキャナなどで紙から電子化した文書でも許しました。
電子文書は、それだけでは、偽造や改ざんが紙による証憑よりずっと容易で
あるという危険性があります。
そこで、どのくらいの解像度でスキャンしなければならないか、それに真正性を
確保するためにどんな電子署名が必要か、どんなタイムスタンプを付与すべきか、
たとえば、財務省令による、税務書類の基準が決まっています。
これに準じれば、相当の信頼性で真正性を確保できます。
つまり、具体的な技術的基準も十分参考になるものがe-文書法/財務省令という
形であるのです。
これを法律に規定されただけでなく、如何に偽造や改ざんなどの
不正の防止に利用していくか。
こういうことを提起していくことも我々業界に携わる者の重要な使命でしょう。














